ジャックと豆の記

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35週での早産 -出産-

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 お腹の張りが収まらない

 切迫早産と診断され、Aクリニックに緊急入院した翌朝。前日夜から一度は収まっていた出血が再度あり、張り止めの点滴を増やすことに。朝食は焼きたてのパンとかぼちゃのポタージュ、洋食のメニューが出て美味しかった。そういえば食事が美味しいことで有名なクリニックだったなーと思いながらほぼ完食。母が午前早くにクリニックを訪れ、入院セットを届けてくれた。ここでもまだ余裕の構え。

 

 しかし、10時にNSTモニターを取り始めてから異変。子宮がキューっと引っ張られた後に、お腹の皮がギュッとつままれるような感覚があり、ついに張りっぱなしのまま収まらなくなる。生理痛のような鈍痛がお腹に起こり、肛門へ抜けていく。生理が止まって8ヶ月、この痛みが妙に懐かしい。あっという間に10分おきの収縮間隔が7分になり、5分になる。どんどん張り止めの点滴量が増え、ウテメリンからマグセントに変わる。マグセントの点滴量が10分おきに2mlずつ増えていき、ついに最大量入れても、お腹の張りは一向に収まらなかった。NSTモニターを見つめる看護師さんの顔がどんどん険しくなる。こちらの不安も募る。

 

 昼頃、たまたまこの日に上京する予定を入れていた夫がクリニックへ到着。不測の事態に慌てることもなく対応してくれるのがありがたい。昼時なので、クリニックは昼食にいなり寿司を出してくれたが、心配が過ぎて全く喉を通らなかった。

 

 午後になり、ごった返す外来をかき分けて医師が診察に来てくれる。子宮頸管どころか、すでに子宮口が2cmまで開いており、このまま分娩となることを伝えられる。

 「このまま下からの分娩となるでしょう」。この時代、分娩方法にこだわりなど持っていないつもりの自分だったが、早産でも自然分娩できる、ということになぜか安堵したことを覚えている。

 35週1日での早産となるため、早産児に対応できるNICU(新生児集中治療室)がある総合病院を紹介される。運良く、最寄りの市民病院が受け入れてくれることとなり、救急車で搬送されることとなった。タンカに乗って救急車で走っていると、ダイレクトに地面の感触が感じられるのだな、などとどうでもいいことを思う。Aクリニックの看護師さんに同乗してもらい、救急車の窓から冬の枯れ並木が揺れているのを見ながら、「ああ、もっと早く美容院へ行っておけばよかったな」とこれまた他人事のように思う。すでに陣痛の間隔は3分になっていた。

 

 総合病院へ転院

 この日は土曜日だったため、休日用の入り口から病院内へ入る。夫と母はタクシーで先に病院へ到着しており、入院の手続きなどをしてくれていた。

 病院で、担当看護師さんが迎えに来てくれる。病院に到着してすぐに産婦人科医による内診を受け、子宮口が7cmまで開大していることを告げられる。その日来ていたパジャマを脱がされ、出産用のレンタルのパジャマ(下半身が大きく開くもの)に着替える。その後、陣痛室で担当看護師さんからプロフィールと健康情報について聞かれる。すでに1分間隔となった陣痛に耐えながら、波の合間を縫って回答する。

 

 病院に到着してから、一気に陣痛が激しくなった。尾籠な話で恐縮だが、陣痛は便意に似ていて、そういえばこの日一度も排便していなかったことを思い出し、看護師さんに「浣腸してもらえませんか」と願い出たかったが、バタバタしていて結局お願いはできなかった。「いきみたくなっても子宮口が完全に開くまではいきんじゃダメ」と言われる。とは言われても、強烈にいきみたくなる瞬間が何度かあり、これを我慢するのはなかなか難しい。

 16時半に陣痛室へ入り、途中何回かの内診(すごく痛い)を経て、看護師さんが「子宮口10cmまで開きました!」と判断。夫の立会いのもと、18時に分娩台へ上がる。結局破水はしなかったため、看護師さんに指を突っ込んでもらい、何とか破水(これも痛い)。

 

私「アーーーーーーッ」

不思議なことに、分娩が進むと勝手にいきみたくなり、また勝手に声も出る。

助産師さん「赤ちゃん、頭が見えました!」

私「アーーーーーーッ」

産婦人科医「会陰切開しますね」

私「アーーーーーーッ」

助産師さん「赤ちゃんの心音が弱まってる!お母さん、口を閉じていきんで!赤ちゃんに酸素を送ってあげて!」

この時、酸素マスクを付けられる。

私「んんーーーーーーーーーーーっ!!」

助産師さん「もうすぐ出てくる、上に乗りますよー!」

 

 助産師さんが二人掛かりでどーんとお腹の上に乗って、スポーン!と息子氏誕生。この時の意識はスローモーションになり、息子氏がずるっと外に出て来たのが映画のコマのように網膜に焼き付いた。すぐに切り開かれた会陰の焼け付くような痛みが襲って来たが、それ以上に出産の感動が大きかった。陣痛から誕生まで、まるでロケットに乗って来たかのようなスピード出産だった。

 

 しかし、赤ん坊は口を開けているのに産声が聞こえない。「どうして泣かないの。。」自分の背後で、待機していた小児科医たちが赤ん坊を処置しているのがわかり、不安が募る。待つこと数十秒後、赤ん坊は大きな声で産声をあげた。後から聞いた話では、出産直後は喉に血が詰まって息が止まっていたそうだ。すぐに小児科医が刺激を与えたところ、まもなく血を吐き出し、泣かない時間を取り戻すかのように勢いよく泣き始めた。元気よくワンワン泣く息子氏を見て、夫は少し泣いていた。

 

 立派に産声をあげた息子氏の手を握らせてもらう。全体に赤みの混じった青紫色の体、頭と胴体は赤ん坊のそれだが、手足はか細い。2100g程度で生まれると聞いていたが、予想外に息子氏は小さかった。体重2179g、体長46.2cm。35週1日での早産だった。

(出産編その後につづく。。)